kyaurope2月11日3 分電脳妖精ユヅキ #4それから数日、あてのない旅が続いた。孤児院から一歩も出たことのない私に、あてなんてあるわけがなかった。 行く先々で、私ひとり店先のパンを盗み、川で汚れた服を洗ってやり、橋の下で雨風を凌ぎ、みんなでくっついて丸まって寝た。 そんなある日のことだった。...
kyaurope2月11日2 分電脳妖精ユヅキ #3今までのことだって予想できたわけじゃなかったけど、それでも予想外だったのは、孤児院の何人かの子たちが私を探しに来てしまったことだ。 ――探しに来てくれたのが、私の“お母さん”と“お父さん”だったなら。 そんなことを考えてしまった悔しさに唇をきゅっと引き結んで、橋の下でみっと...
kyaurope2月11日2 分電脳妖精ユヅキ #2今日も、世界は地獄だ。 私は孤児院で生まれ育った。衣食住に困ることはなく、何も知らない子供の頃は幸せだった。ただ無邪気に、給食の残りを奪い合い、ボールを追いかけていればそれだけで笑えた。 ある日、自分の“両親”を目にするまでは。...
kyaurope2月11日2 分電脳妖精ユヅキ #1.5……ヴヴーン、と、薄暗闇に、地に響くような電子音が唸る。 それは呼吸のように規則正しく、あるいは呼吸そのものだった。 それとは別に、ワイングラスをことりと置いた呼吸体。人間の男。 「またシュワルツが“ユヅキ”を捕り逃したらしいぞ」...