電脳妖精ユヅキ #3
- kyaurope
- 2024年2月11日
- 読了時間: 2分
今までのことだって予想できたわけじゃなかったけど、それでも予想外だったのは、孤児院の何人かの子たちが私を探しに来てしまったことだ。
――探しに来てくれたのが、私の“お母さん”と“お父さん”だったなら。
そんなことを考えてしまった悔しさに唇をきゅっと引き結んで、橋の下でみっともなく丸くなっていた私は立ち上がり、お姉ちゃんの仮面を被った。
少し前までならそれは仮面ではなく、紛れもない素直な自分自身だったのに、今ではまるで遠い他人にでもなってしまったかのように、息苦しい。
心配そうに見上げる子供たちに、目の端を拭って笑顔で頭を撫でる。
一体この子たちのうちの何人が、自分の親に見捨てられるのだろう。
そう思うと、心臓がきゅっと握りつぶされるような感覚がした。
自分の親に引き取られていく人も、居ないではなかったのだ。だから、不安半分の反面、期待してしまっていた。
一体この子たちのうちの何人が、自分の親に裏切られるのだろう?
その裏切りを、あろうことか自分たちの味方だったはずの孤児院に肯定されてしまうのだろう?
私はみんなを抱きしめられるだけ抱えて抱きしめた。背を撫でた。頭を撫でた。
私は、“お父さん”にはなれなくても、“お母さん”にはなれるかもしれない。いや、なってみせる。
こんな裏切りを、痛みを、この子たちに体感させてしまうくらいなら。
「――みんな。お姉ちゃんと一緒に、孤児院を出ようか」
お姉ちゃんを、信じてくれる?
そう笑顔で呟いた私に、みんながどよめきはじめる。
私は、卑怯にも、言葉を続けた。
「あの孤児院のおばさんたちは、私たちの味方じゃないの。私たちの、お母さんにはなってくれないの。……だから、私がみんなのお母さんになってあげる。――お母さんと一緒に、来てくれる?」
“お母さん”。
その言葉に郷愁を抱かない子なんて、いなかった。
口々に、「お母さん」と呼んで寄ってくる子たちを、優しく、強く、抱きとめた。
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