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電脳妖精ユヅキ #2

  • 執筆者の写真: kyaurope
    kyaurope
  • 2024年2月11日
  • 読了時間: 2分

 今日も、世界は地獄だ。

私は孤児院で生まれ育った。衣食住に困ることはなく、何も知らない子供の頃は幸せだった。ただ無邪気に、給食の残りを奪い合い、ボールを追いかけていればそれだけで笑えた。

ある日、自分の“両親”を目にするまでは。

 ――“優良児培養制度”。これについて習ったのは、中学生になってからだった。

遺伝子的に最も遠い、つまり恋人として、生物として最も好相性の男女をAIが導き出し、引き合わせる。そこで合意の元引き取られるようであれば、二人の間に赤ん坊が贈られる。

紛れもない、二人の子供。しかし、そこで引き取りを拒否されれば、その赤ん坊は孤児院へと送られる。そして、その子供が一定年齢を迎えた頃、二人と“赤ん坊だった子供”は引き合わされる。

最終確認として。立派に育っていこうとする紛うことなき“我が子”を改めて見て、なお引き取りを拒否するか、それとも迎え入れるか。


 ――そして私は、拒否された。

私の“両親”とやらは、どこまでも“他人”だった。自分たちの快楽以外に、何の興味もない人間たちだった。

 決して珍しいことではないと、慰められた。

彼らには引き取る自由もあれば、引き取らない自由もあるのだと告げられた。

――自由。……なら、私には? 私には、どんな自由があるっていうの?

そのまま孤児院に残っていてもいいし、どこか働いてみたいところで働いてみてもいい。学びたいことがあるのなら学校へ行ってもいいし、街へ出て遊んで暮らしてもいいと言われた。

――この世界は、全てが許される自由があるのだと。

そう言って微笑んで先生は、優しく手を伸ばした。


 ――私は、その手を平手で打ち払った。

自由。自由。自由。そんなに自由だって言うのなら、その“ヤサシサ”を拒否する自由だって私にはあるはずだ。

全てに反吐が出るようだった。こんな世界、間違っている。

私は、こんな世界になど生まれてきたくなかった。

私は、どこへともなく、駆けだした。



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