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電脳妖精ユヅキ #1.5

  • 執筆者の写真: kyaurope
    kyaurope
  • 2024年2月11日
  • 読了時間: 2分

 ……ヴヴーン、と、薄暗闇に、地に響くような電子音が唸る。

それは呼吸のように規則正しく、あるいは呼吸そのものだった。

それとは別に、ワイングラスをことりと置いた呼吸体。人間の男。


「またシュワルツが“ユヅキ”を捕り逃したらしいぞ」


 からかうような声色はややしわがれていて、初老の響きを湛えていた。


「放っておけ。どうせ“アレ”に対して日和見なのはAI様も一緒なんだろ」


 星のまたたく宙を眺めたまま応えたこちらはまだ少し若そうだ。


「何か悪いことでも起こさない限り、本気で動こうとはしない。流石はお役所様が造っただけある対応だ」


 つまらなさそうに鼻を鳴らして頬杖をついている男に、まだまだ笑いながらワイングラスを傾ける男。


「そう気に入らんものか? 俺は面白いジョークみたいで好きだがな」

「何かあってからでは遅いんだぞ。“アレ”が害意を持ったらどんな災害になるものか」

「ないと思うがなぁ」


 カラカラと笑う男の様子に尚更機嫌を悪くしたようだったが、それでも声色は穏やかなものだった。


「だから監視役が必要なんだろ。……俺たちも幸せな夢を見させてもらった分、あいつらには幸せに眠っていてもらいたいからな」



 そう聞いて、初老の男は笑うのをやめた。――そして、背後にある無数の鉄箱とその一つ一つにともる青白い細い光に目を細めながら、呟いた。


「――幸せな夢、ねぇ」





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