ちっちゃくなっちゃった
- kyaurope
- 2017年4月20日
- 読了時間: 3分

「あの~…………」
一同が会議室、のテーブルを使って会議という名のお茶会をしていたところに、弱々しいが聞き慣れた声色が投げかけられた。
見れば随分と物怖じした風のユヅキが咄嗟に顔を壁の向こうに引っ込めた。
「あ? どうしたユヅキ」
世話焼きなリンクが声をかけると、ユヅキは顔を出しながら困ったように問いかけてきた。
よく見るとその衣装は昔ユヅキが制服にしていた子供用のもので、背もいくらか小さいような……。
「……そ、その沢山の人たちは、どちらさまでしょうか……」
はて困った。
ユヅキは何の冗談か、ピュイ、マルス、クロラやクィンタなんかを見て、心底困った風に、リンクさんのチームの人たちですか、などとのたまいだした。
ほぼ全てユヅキが自分で勧誘して引き込んだメンバーなのだが。
手招きしておずおずと出てきたユヅキと対話する限り、いかにも本当に困っている顔をしているばかりだ。優しくて非演技派であるユヅキであれば、そろそろ吹き出してネタばらしをするはずなのに、一向に迷子の顔をしている。
そんなに困られても、こっちが困る。ピュイは大笑いしながらほっぺたを引っ張っているが。
マルスが少々唸る。
「あ~……。うん。僕はリンクの友達だよ。それで、君が最後に行った任務って何か覚えてる?」
「え……? あ、よろしくオネガイシマス……。ん~と……、惑星ウォパルの調査……ですかね……?」
リンクはどうもピンときたらしく、クロラに顔を向ける。
「クロラ、こいつ、"いつの時間軸のユヅキ"だ?」
「さあね? でも、今じゃない。もう少しだけ前だね」
「いや、お前の基準じゃなくてさ」
「君の予想通りぐらいじゃないかな」
自分まで読まれたらしいことにリンクはちょっとケゲンな顔しつつも、なるほどわかった、と返す。
期待にわくわく輝いているピュイの瞳を呆れたように睨み返しつつ、リンクは短いため息をつく。
「多分コレ、俺がアークスになった頃の、二、三年ぐらい前のユヅキだ。なんでこうなったかは知らん」
「マジ? 退化しちゃった系てきな?!」
「ピュイなんか知らない?」
「え? いや、マジで知らない」
リンクとピュイの会話を聞いていたマルスが、そっと割って入る。
「どうする? もうすぐ防衛訓練があるんだけど……誰か行く?」
「わかった。それ、ユヅキに行ってもらおうぜ」
「え!? 記憶喪失みたいなユヅキ君を出して大丈夫なの?!」
「シップ管理のクラスチップまでは巻き戻ってないだろ……戦闘経験はクラスチップを呼び出せば多少なりとも引き継げるはずだし、問題ないどころかその方がいいと思うな」
「それって大丈夫なのかな」
「ユヅキ本人だからいけるいける。互換性としては何の問題もないだろ。第三世代だぞ? それに、もしコレが例えばダーカーの悪戯だったとしても、むしろソレによってなんかしら支障が出てわかるから試験紙としても最高だって」
「確かに。合理的だ」
「あんたらすごいこと考えるわね……」
リンクとマルスの会話に逆にピュイが引く。
「ええっと……?」
「というわけだユヅキ。ちょっと新しい防衛訓練がもうすぐ始まるらしいからせっかくだし行ってこいよ」
「…………??? うん……じゃ、そうするね」
律儀にも皆に向けてお辞儀をして退室していったユヅキを見送り、マルスが腕を組む。
「それにしても……」
「うん?」
「あれが何らかの原因で二年前から跳んできたユヅキ君なら、"今"のユヅキ君はどこに行ったんだろう……?」
全員が顔を見合わせた。
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※ちっちゃくなっちゃったの続き 身の丈140cmにまで小さくなったユヅキが、顔を真っ青にして会議室の扉を跳ね開け飛び込んできた。 「なんなんですかあれは!」 「おかえりユヅキ」 「おかえりじゃないですよ! なん、全然見たことも聞いたこともないエネミーがわんさか出てきて、あの...
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