ちっちゃくなっちゃった 3
- kyaurope
- 2017年5月20日
- 読了時間: 4分
※ちっちゃくなっちゃった 2の続きです
「え。それマジか?」
「うん。君の言うとおり記録を映像含めて漁ってきたけど、少なくともクエスト中やその前後に、それが直接の原因で変化したことは何もなさそうだね」
「何を見ても、別に"若返って帰ってきた"ことはないと」
「なかった。この間のVR防衛訓練に、背丈の小さいユヅキ君が向かったのが最初だったよ」
「IDも同じ?」
「うん。出撃許可もなんのこともなく通ってる」
「あー……うーん。そりゃそーか……」
わかっちゃいたけど、というノリでリンクが考え込む。
とどのつまりノーヒント。
マルスの所属する部署ではここまでだ。
「もし入れ替わりなら行方が気になる、とは言ったけど、記憶喪失の方かもしれないよ?」
「まー、わかんないな。ちなみにメディカルセンターに連れて行ったけど異常なし」
「記憶喪失は怪我じゃないから……」
「そうなんだよなあー」
現在の環境にも随分慣れている。
流石に管理までは把握できていないので、メンバーは全員全て自己管理。
自由に活動できるところはユヅキが寝ていた頃を思い出すものの、皆いつもと変わりなくやっている。
あの時はピュイが張り切って仕切っていたが、今回はそこまででもなくのほほんとしている。
ユヅキがピュイに捕まって撫でくり回されているところは、日常となんら変わりなかった。
「そんなに心配する必要はない、か」
「僕はそう思うよ。それに、万が一どこかにいたとしても、彼ならちゃんと帰ってくると思うし」
「それは確かに」
リンクはマルスに情報を求める裏で、クロラにも同じことを要求していた。
『お前が使えるありとあらゆる手段の中で、一番誰の目にもつくことがない方法で、ユヅキは今どういう状況でどこにいるかを調べて、教えてくれ』と。
それを聞いたクロラがニヤリとして、『それ、本当に聞きたい?』などと返してきたのを思い出す。
含みのある言い草に不安になって、少し言い淀んでしまった。
『あいつが危険な目に遭ってなくて、帰ってくるなら、何でもいいんだけど……』
なんて、クロラにとってはあまりに曖昧すぎる回答をしてしまう。
本当に意図を汲んでくれるのか心配になって、なんと言い直せば正しいのか真剣に考えていたら、クロラは随分と優しい顔で肩をすくめた。
『それなら、何も心配はいらないよ』。
リンクは目を閉じ、しばし考え込んだが、やがて目を開きクロラの胸に拳をあてて、信じるぞ、と言った。
彼はどうぞ、と微笑んだ。
(……なら、ほっとくことにするか……)
んー、と頬杖をつきながら、リンクはまた考え込む。
実はピュイにもクロラと同じような要求をすることはできるのだが、この時点でやめることにした。
なにより、ピュイには座標が必要だ。もしユヅキがどこか別の場所にいて救援を求めているのだとしたら、クロラがポイントを割り出して、そこへピュイが向かえば、大体問題は解決する、と思っていた。
しかし、クロラ曰く心配はいらないという。
なら、闇雲にピュイと実地で探しに行っても仕方がない。暴れたがりのピュイに意味のないオーダーを出すのは、やめといた方が無難だ。
「……やっぱり、心配? もう少し、何か手を打てないか探してみようか……」
マルスの言葉が思考に割り込んできたが、問題はない、もう結論は出ている。
「いや。大丈夫だろ。そこにいるユヅキが他でもないユヅキなのは違いないだろうし、もしそのユヅキがちょっとぐらい散歩に出たとしても、晩御飯までには元気に帰ってくるでしょう」
そう結論付けて、リンクは立ち上がる。それならば、右往左往などせずいつも通り過ごせばいいだけだ。
そんなことより明日の晩御飯は何が食べたいか考えておかなくては。ユヅキのサポートパートナーたちが、いつもの実地の仕事をなくして暇しているのだ。
マルスが首を傾げた。
「……え。今夜帰ってくるってこと? ん? え? どういうこと? なんでわかったの? あれっ?」
「……。あ。ごめん……いや、そうじゃなくって……比喩っていうか……ええと、ごめん……」
「…………。あ! そういう意味か! ごめん、わかった」
「ごめんなさい」
……しまらない。
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