
──“寄り添う影”その後
◆ Scene0.1:クランシェアもいるよ ──
――N市、廃工場奥地。
FH調査セルの単騎殲滅を命じられて乗り込んだ“アナーキスト”は、期待通りの手際で交戦を開始し十数人を地に叩き伏せる……が。そこには情報にないイレギュラーの存在があった。
恐らくはFHのオーヴァードで、途中から乱戦騒ぎに割って入り、黒峰を執拗に攻撃し本格的な交戦に発展。苦戦を強いた。
殺し合いを演じるも、黒峰は対象のコードネームさえ把握していない。
“トリックスター” :
「……これがキミの探しモノとそのデータかなー? あははーッ! 面白いから、貰っていくねー! ……ほらっおいで! あのこわーいUGNの犬から逃がしてあげようじゃんっ!」
データチップを大事そうに抱える主要研究員一人の手を取り、心底愉快そうに黒峰の顔色を眺める。
あれだけ本格的な交戦を行ったというのに、まるで気が済む程度にいたぶるだけいたぶって満足したとでも言うように、突然くるっと手を引き、ただただ妨害の為だけに戦闘を離脱する旨を宣言しだした。
黒峰 達哉 :
「ッ……!!! 誰が犬だ!! ふざけるな!! まだ戦いは終わってないだろうが!!」
銃撃を喰らわせようと構わず撃ち鳴らす。
“トリックスター” :
「ッ……おぉっと。あぶなァーーーい。喰らったらどうすんの? 死んじゃうよ??」
狂喜の笑みを浮かべるが、回避に冷や汗と、何度か貰った風穴からの鮮血が飛ぶ。
先からとっくに殺し合いをしており、黒峰には自己蘇生も何度も強いていたので死ぬも何も今更である。
「楽しかったよ! 意外とやるじゃん、UGN? いや……“我が家の名誉一族くん”」
にやりと笑い、《瞬間退場Ⅱ》。
黒峰 達哉 :
「…………!! ……なんだと? ッ貴様……!!!」
体が一段と熱くなり“Der Einzige”をブチ込もうとするが、その銃弾はただ空を切る。
怒りと困惑に歯を食い縛る。
周囲にもう生物の気配が無いのを自らの感覚でも感じ取り、絶対にもう一仕事追い詰めてやろうと闘志を燃やす。
《無上厨師》で缶コーヒーを生成。
缶を開け乱暴に呷りながら、支部長に連絡を入れる。
「こちら“アナーキスト”。……対象セルの沈黙を確認。しかし、未確認の戦闘員によって研究者一名を、逃しました。恐らく乱入者は有力なFH戦闘員であり、対象物の確保は……失敗です」奥歯を強く、ギリリと噛み締める。
「……侵蝕率、ですか? 私の? ……」
ふと、缶コーヒーの上部の反射で瞳の色が紅くなっていることに気付く。苦々し気に答える。
「……90%を、超えました」
「……作戦からの離脱命令、ですか!? いえ、私はまだやれます! 無理などありません! 必ず何が何でも対象を追い詰めて、挽回を……!!」
「………………。承知しました。では、私は支部に戻ってデータの整理をさせていただきます。引き続き作戦に当たられる皆様方におきましては、どうぞご無事で」
通話を切る。缶コーヒーを地面に叩きつけ、勢い良く蹴り飛ばす。
「ッ…………クソッッ!!!!!」
ぜえはあと怒りに燃えながら、リザレクトを掛けつつふらふらと歩く。
目を細めて、EE二種でJPSとライターを生成。深く吸い込み、吐き出す。
支部長や人前では黙ってピアスを弄って堪えているのみであったろう、絶対に見せられない怒り狂いようだ。
シーン終了
久遠緤 :
久遠緤。UGNにもFHにも属していない彼が、オーヴァードであると知る者は少ない。それでも例外はあるもので、今回の依頼主は、その数少ない例外であった。
ヤクザの組長である彼は、苦々しげにFHにもたらされた損害を語った。依頼内容は対象セルの殲滅。要は、報復行動である。
複数人の相手は不得手とはいえ、戦闘員のいない調査セル。然程苦戦することもない、はずだったのだが。
(なんだか面倒なことになってるな……)
既に転がっている複数の死体。手を下したであろうUGNの彼は、アナーキストと言ったか。
対峙している少年は記憶にない。が、恐らくはFHエージェントなのだろうということは想像がついた。
ここでわざわざ乱入する意味は感じられない。あるいはアナーキストに加勢してもいいのかもしれないが、なるべくなら接触は避けたい。以前も銃を向けられた相手だ。
《無音の空間》はそのままに、影から様子を窺う。
と、少年がひとり生き残っていた研究員を連れて瞬間退場を宣言する。
「逃がすか」
依頼は殲滅。一人の生き残りも許さない。
「そこか」
空気の流れから位置を割り出し、その脇の鉄塔を駆け上る。
狙うのは研究員。エージェントも瀕死だろうから、ついでに仕留められれば御の字ではあるが、依頼の達成が最優先だ。
2本の短剣を作り出し、身軽に飛び降りる。落ちる影に気付いた時にはもう遅い。
驚いて見上げた研究員の喉元を切り裂き、もう片方のナイフを少年に向けて突き出す。
“トリックスター” :
「……おぉっと。キミは? また新しい僕の遊び相手かな?」へらへらと口角を上げたまま、軽い調子で両手を挙げてみせる。
久遠緤 :
「……その体で遊べると思うんなら、相手になるけど?」
真正面から戦闘員の相手をするなら、クリスタライズが欲しい。いつでもジェネシフトを発動できるように身構える。
“トリックスター” :
「……っふぅーん。いいねー。超いいじゃん。キミのことは覚えておいてあげるよ。なぁーんて、忘れてるかもしれないなぁ! アハハ!」
「いいよ。今日は僕、機嫌がイイから引いてあげる! 新しいオモチャもからかえたしね! バイバイ、“ちっちゃい少年”!」
“トリックスター” : 《瞬間退場》
久遠緤 :
「おいこら誰が『ちっちゃい』だ!! ……ったく」
まあ、いい。仕事は終わったわけだし、深追いは厳禁。ふう、と息を吐いて、目に入りそうになった返り血を拭う。そのまま立ち去ろうとして、研究員の死体が何かを握りしめていることに気が付いた。
ナイフを砂に帰し、まだ温かい彼の手を開かせる。目に入った自分の手首が、少し腫れていることに気が付いた。切りつけた拍子に捻りでもしただろうか?
あまり気にせず、研究員の手に目を向ける。握られていたのは、何が入っているかも分からないチップだった。
「……?」
しばし眺めて沈黙する。
「UGNの目的、もしかしてこれかな……」
────自分の中に浮かんだ考えに嫌気がさす。
自分の仕事は終わった。であれば、本当に、全く、完全に。そんなことをする必要はないのだけれど。
久遠はチップを持って踵を返し、アナーキストが交戦していた建物へと向かった。
シーン終了
久遠緤 :
荒んでいる。これ以上ないくらいに荒んでいる。明らかに苛ついた表情で煙草を吸う彼。遠くには蹴り飛ばされた空き缶が。戻ってこなければよかったかも、と一瞬後悔した。けれど、すぐに『ちょっとした』悪戯心にすり替わる。
気配を殺し、見つからないように彼の後ろに忍び寄る。背後に回った瞬間に《無音の空間》を解除し、唐突に声をかけた。
「荒れすぎ。俺がその気だったら、一発食らってたよ?」
黒峰 達哉 :
即座に《ハンドレッドガンズ》で拳銃を生成し、向き直ると同時に対象の頭に銃口を向け、発砲する。素材はタバコとライター。
久遠緤 :
ひょい、と頭をずらすと、弾丸は頬を掠めていった。
「いや、そう来ると思ってたけど。いざやられると、ちょっとひやっとするな……」
ちらりと見上げて笑みを浮かべる。
黒峰 達哉 :
ぎりりと奥歯を噛み潰し、舌打ちする。
「……何の用だ」
チャッ、と改めて狙いをつけておく。もう片手も懐の拳銃に手を伸ばす。
久遠緤 :
「俺も仕事。……このセルはUGN以外にも目を付けられてたってこと。まあ、俺が来る前にあんたが片付けてたみたいだけどね、大半は」
最後をわざとらしく付け足し、ニヤリと笑う。
「で、あんたは任務成功しても失敗しても一服するのが習慣なわけ?」
黒峰 達哉 :
「あぁ……??!」
極まった引きつり笑いをしながら
「何が言いたいんでしょう。私のトリガーは今見ての通り羽根のように軽いですよ??」
久遠緤 :
「ふぅん……? いいの? 本当に? 侵蝕率まずいんじゃないの?」
からかうように言って、反応を窺う。赤い目を真っすぐに見据えて。
黒峰 達哉 :
「ッ……!!」
ぐぎぎ、と言わんばかりの形相で見下し睨みつけ、ふっと力を抜くと見せかけ距離を詰め銃底で脳天を殴りつけようとする。
久遠緤 :
「は……!? いった!」
予想外の動きに回避が遅れ、鈍い音が鳴る。頭をさすりながら、恨みがましい目線を送った。
「はあ、ちょっとした悪戯にここまでムキになるとか……。エージェントとしてどうなんだよその性格は……」
黒峰 達哉 :
「やかましい。俺は今機嫌が悪いんだよ。見て分からないお前が悪い」
殴ってちょっとすっきりしたのか、鼻を鳴らしてそっぽを向く。
久遠緤 :
「いや分かる。どこからどう見ても機嫌悪いのは丸分かりだろ」
思わず真顔で言う。
いや違う、こんなことをしに来たわけではない。そっと後退してアナーキストから離れてから、チップを取り出す。
「これ。お届け物」
黒峰 達哉 :
「だったら尚更喧嘩を売ったお前が悪い」
チップをじっと見つめて
「……それは」
久遠緤 :
へえ、と得意そうな笑みを浮かべて、
「やっぱりこれだったんだ? UGNの目的。何が入ってるんだろうな?」
こんなものの回収は命じられていないし、中身にも興味はない。ただからかうためだけに迂遠な言い方をする。
黒峰 達哉 :
拳銃を向ける。二丁分。
「それを渡せ。今すぐに。」
それさえ持って帰れば、少なくとも今回の失態は一つ帳消しにできる。侵蝕率なんかどうでも良い。
久遠緤 :
「……条件がある。取引だ」
今までの態度とは打って変わって、真剣な口調で言う。命のやり取りに慣れた、暗い殺人者の目をしていた。
黒峰 達哉 :
「……聞きましょう」
やや意外そうに瞼を動かすが、落ち着き払って次の言葉に集中する。
久遠緤 :
「ひとつ。俺がここにいたことはUGNには伏せること。面倒は避けたい」
静かに淡々と言葉を繋ぐ。
「ふたつ。……あんた、俺の周りにカメラとか盗聴器とか仕掛けてるだろ。あれやめろマジで。気持ち悪くて仕方ない」
うんざりしたように顔を顰めた。
黒峰 達哉 :
「……ほう」(案外消極的な要求だ)
「お気付きでしたか。おかげであなたのことは随分よく分かりましたよ、“エクスピアシオン”久遠 緤さん」
真顔で久遠を見下ろす。
久遠緤 :
「……コードネームで呼ぶな。昔の名前だ」
ふっと目線を逸らし、チョーカーから覗く痣のような跡を触る。
「今はただの一般人。あんたに監視される謂れはない」
黒峰 達哉 :
「……」
拳銃を仕舞う。もう一丁も霧散させるついでに、再びタバコとライターに変換し、咥えて火をつける。
「どうやらそのようですね。良いでしょう。貴方がたのホームが、新たな犯罪の温床にならなければ、ですが」
久遠緤 :
「あの辺、治安悪いからな……」
言いながらチップを投げようとして、手首に痛みを覚えて思いとどまる。歩いて近づき、チップを握った拳を差し出して、受け取るように促した。
「……いや、煙草好きだねあんた。かっこつけたがりかよ」
ニヤ、とまた意地の悪い笑みを浮かべる。
黒峰 達哉 :
チップを受け取り、小さくどうも、と呟く。ふー、と煙を吐いて
「やかましい。ガキの癖して盗んだバイクですらない物で走り出してるような奴がよく言うな。免許取って自分で買え」
取引とやらが終わったんならプライベートだろと言わんばかりにまたタメ口に戻る。
久遠緤 :
煙に少し眉をひそめて
「るせ。こちとらその日の飯で必死なんだわ。俺のこと調べたんなら知ってんだろ、ボンボンのあんたと一緒にすんな」
不機嫌そうに、ぷいっとそっぽを向く。
黒峰 達哉 :
「は?」
「……家は関係ないだろ。もう出てるから自分の稼ぎだぞ。環境のせいにするんじゃない」
不機嫌さがまた表情に出る。
久遠緤 :
「はっぁああ!? なんも分かってねーのな! お前俺がここまで持ち直すのにどれだけ……ッ! あーあーあー! やっぱ渡さなきゃよかった! この苦労知らずのお坊ちゃんがよ!」
逆鱗に触れたらしく、珍しく大声をあげる。
黒峰 達哉 :
「なッ……!?」
露骨に表情を変える。
「ッ誰が苦労知らずのお坊ちゃんだって!? 俺がどれだけ嫌な思いをさせられてきたと思ってるんだ!! あんな家に生まれて苦労しない人間の方が間違ってるね!!」
こちらも逆鱗に触れられたらしい。
久遠緤 :
「い・や・な・お・も・い!? 今日死ぬかもって思いながら生きてきた人間に言うセリフがそれか!? あんたマズローって知ってる!? その家にいつまでも甘えてたのは誰だよ! 出てるったって、覚醒してなきゃどうせ今もボンボンやってたくせに!」
大声で怒鳴り返す。
黒峰 達哉 :
「ッ…………!! あ、あ……、お、お前ッ…………!!!! ッあは、ッあははッ、流石無責任なガキンチョさんですねェー、あんだけ各所に溝埋めされてる一人息子の長男が家簡単に出られるわけねぇだろ!!!! どれだけの責任がそこに乗ってると思ってるんだ!! ははッ、あーっさり親置いてろくに公的機関も頼らず被害者ぶってる奴は違いますねェー!!!? いつまでそうやってお仲間同士で傷舐め合い続けるおつもりなんですかねェ!?」
最早タバコなんて持ち手の先についてる飾りである。
久遠緤 :
「ああ!? 今チビたちバカにしたな……!? あんな小さいのに必死に生きてんだぞ! それをどうこう言えるようなことを、あんたは何かしてきたのかよッ! 親だって、好きで置いてきたわけじゃ……!」
と、少し泣きそうな顔で睨みつける。
黒峰 達哉 :
「そう思うのならば尚更子供たちを安全な場所に保護させるなりすればいいものを、何故あんな治安の悪い場所で大将を気取っているんですか!? 親だってそんなに良い親御さんだと思うんだったら家に帰って安心させればいいでしょうが!! 人の家庭事情に口出ししてる場合なんですかねぇ!!?」
言い終わるまで気付かず、言い終わってから久遠の表情にしまった、という気が湧く。
久遠緤 :
「お前……! 俺だって、あいつらに安心して暮らしてほしいし、家にだって帰りたいさ、それを……! そりゃあ、あんたから見ればおかしいこともあるだろうけど、それでも俺は……!」
唇を嚙んで顔を背ける。肩がわずかに震えていた。
黒峰 達哉 :
「っ……」
久遠のいかにも泣きそうなのを堪える様子に、動揺してピアスを弄り始める。目を逸らして歯ぎしりしながら次の言葉を探す。
「…………っ別に! 私だって! その、あなたから見ておかしかろうが、私は私で……!」
沈黙の後、舌打ちする。
「っああああッ! 分かりましたー!! あなたのような15歳の子供にムキになった私が悪かったんですよ! どうも大人げがなかったようですね! あははッ!!」
久遠緤 :
「誰が子供だ! その謝ってんだかそうじゃないんだか分かんねーのやめろよ、一番腹立つ!」
先ほどまでの泣きそうな様子はどこへやら。身を乗り出して黒峰を見上げる。
「大体あんたは……!」
言いかけたのを遮ったのは、ぐう、と声を上げた腹の虫だった。
黒峰 達哉 :
……はっ、とその音を聞きつけ、口角を上げる。
「……おや? “お子様”はお腹が空いておられるようですねぇ? そろそろおやつの時間ですか? それともお昼もまだだったり……?」
久遠緤 :
恥ずかしさで、顔が赤く染まる。
「わざと言ってんだろそれ! 昨日の昼が最後だけどそれがどうした!」
最早ヤケクソである。
黒峰 達哉 :
「おやぁー……。それはそれは…………」
顎に手を当てニヤニヤする。
「あぁー……。私もそろそろ帰って夕食にしようかなぁー?? 何作ろうかなぁー? とんかつかなー、ハンバーグかなぁー。チャーハンかなー。厨房に材料は何でも揃ってるなー。」
爛々とした顔で
「……ウチの店に来ますか? 料理くらい作ってさしあげますよ? 何が食べたいですか?」
久遠緤 :
「なっ……。平気でそういうひどいことを……! 食べ物で子供を誘惑するとか最低だぞ!」
空腹を自覚したせいか、急激にIQの下がった返答をし始める。また腹が鳴ると、長い沈黙の後に一気に元気をなくして呟いた。
「………………………………お腹空いた」
黒峰 達哉 :
勝利を確信したのか、すっと感情が落ち着く。顎に手を当てたまま元気のない久遠を見下ろす。
「……連れていってあげましょうか? バイクで」
久遠緤 :
「え、いや自分のある……」
すっと真顔になって見上げる。ついていくことは、もう決定事項。
黒峰 達哉 :
「……法律違反では?」
久遠緤 :
「未成年喫煙者に言われたくない」
黒峰 達哉 :
「……行くのか行かないのか」
久遠緤 :
「行きます」
そんなわけで、二人は現在支部員不在のN市支部、キッチンにしへと向かったのであった。
久遠緤 :
「…………」
(ついてきてしまった……)
黒峰 達哉 :
(今なら支部長……いや、店長も犬獅子も、伏見さんも……よし、皆不在だな。説明の手間が省けて助かる)
「……さて。何が食べたいんですか?」
さっさっと手慣れた速度で席に案内し手洗い消毒メニュー手渡してエプロン締め
久遠緤 :
「えっ……いやその……マジで食べさせてくれるわけ……? 俺、金ないよ……?」
黒峰 達哉 :
「苦労してるのでしょ? ……家なき子供からむしるほど余裕のない店ではありません。好きなだけ食べてください」ここは西譲り
久遠緤 :
「なん……、なんだよ急に! なんでそんな突然いいヤツになるんだよ!! その、調子狂うだろ!!!」
黒峰 達哉 :
「突然も何も、私はいい奴ですが。……あと、お飲み物は何がよろしいですか?」
久遠緤 :
「いいヤツ……? いやだってさっき……」
「…………。飲み物……。お腹壊さない水……」
黒峰 達哉 :
「。。。」
え、えぇ……境遇は知ってはいるけど、日本ですよね? そこまで?? 海外の戦災孤児??って顔
「……オレンジジュースとか、コーラもありますよ」
一応氷入れて冷えた水コップ置きながら
久遠緤 :
「え……。りんごジュースとか、ある……?」
黒峰 達哉 :
「ありますよ」すぐ冷蔵庫開けて持って見せ
久遠緤 :
「それがいい。……です」
なんか急に敬語になる
黒峰 達哉 :
「承知しました」店内敬語
コースターとストロー刺さったりんごジュース置いて「決まったら教えてください」
久遠緤 :
「え……。どうしよう……」
(やべえ分かんねえ、しばらくこんな料理と呼べるごはん食べてなさ過ぎて味の想像がどれひとつとしてつかねえ……!)
黒峰 達哉 :
「……。」
ちょっと放っておこうと思って携帯手に取ったけどもあまりに真剣に困ってる様を見て
「……お子様ランチ。チキンライスとスパゲッティと唐揚げとハンバーグとプリンがついてきますが」
久遠緤 :
「あのさ、いくら年下でも15歳にお子様ランチはねーと思うぞ……? ……けど、なんか色々入ってるみたいだしそれにする」
黒峰 達哉 :
「かしこまりました」
携帯伏せて置いてすっと立ち上がって奥の厨房に消える
……の、前に。ちょっと戻ってきて備え付けのテレビのリモコンをつけておく
久遠緤 :
(テレビガン見)
「すげえ……これ、店でいっぱい並べられてるところしか見たことねえ…」
とりあえず立ち上がって色んなところを観察している。そわそわしている。
「そういやあの兄ちゃん、さっきこの板見てたな…」
携帯に手を伸ばしかけて
「いや、勝手に見たらダメかな…」
「いい匂い……」
そわそわしながら厨房の方に吸い寄せられていく
黒峰 達哉 :
手際良くお子様ランチサイズの各品目をプレートに乗せてます 油の音とかでまだ気付いてないです
小さいプッチンプリンをパッケージのまま乗せて、棚開けて旗取って刺しお盆手に取ったあたりで振り返って気付きます
「……。待てなかったんですか?」
きょとんっとしてたけどちょっと笑います
久遠緤 :
「あっ……え、ちがっ。いい匂いしたからつい……って、これじゃ待てなかったってことだしえっとそうじゃなくて……!」
「その……勝手に入ってきてごめんなさい……」
すごすごと席の方に戻っていきます
黒峰 達哉 :
思わず無意識に笑って
「いえいえ。できましたよ。お待たせいたしました。こちらお子様ランチになります」
久遠の席に丁寧に置いて礼をする
久遠緤 :
「あ、ありがとう……。いただきます……」
ひとくち食べて
「んま」
クランシェア :
(……ヌッ)
久遠緤 :
「!?!??!?!?!」
「誰!?!?!??」
黒峰 達哉 :
満更でもなさそうに微笑んでたらビビります
「……!? …………。クランシェア、さん……!?」
クランシェア :
「えへへ……美味しそうなにおいに釣られて参上……」
黒峰 達哉 :
「えっ、N市に仕事でも……ま、まぁ。お疲れ様です」軽い会釈をします
久遠緤 :
「え……はじめまして……。久遠緤です……」
クランシェア :
「ううん、お腹空いて彷徨ってたの、そしたら良い匂いがして……」
黒峰 達哉 :
(そういえばエグザイルだったな……にしても入口から入ってくれ……)
クランシェア :
「あ、初めまして! クランシェアって言います!」
黒峰 達哉 :
「境獄市の支部長です。……こちらはその辺で拾った孤児です」
久遠緤 :
(どうすればいいんだこれ……。というかこの兄ちゃんと知り合いってことはこの子もUGN…? でもさすがに年下の女の子に喧嘩腰は……)
「おいこら説明!!」
黒峰 達哉 :
「クランシェアさんもお腹が空かれているのですか? 何かおつくりしましょうか」久遠の前の席を手のひらで差し
クランシェア :
(ぎゅるるる……シュコシュコシュコ)
腹の鳴る音
「ぇ、いいのぉ? やったぁ!」
満面の笑みになり速攻で座る
久遠緤 :
「無視すんなよ! 孤児ってなんだよ孤児って!! あっ冷めちゃう」
お子様ランチを頬張りだす
黒峰 達哉 :
「ん。違ったんですか? すみませんてっきり」
「はい。こちらメニューになります」すっとクランシェアに差し出し
クランシェア :
「ありがとぉ! えっとぉ……何があるかなぁ♪」
メニューを受け取り、開き始める
久遠緤 :
「いや親生きてるし……勝手に殺さないでくれる……?」ごにょごにょ
(てかこれどうすればいいんだ。お腹空かせた年下の前で自分はごはんを食べるのか!? いやでも冷めちゃうし、かといって自分の食べさしを分けるのも……!)
クランシェア :
「あのぉ、お兄ちゃんお兄ちゃん! オムライスってできるぅ?」
上目遣いで黒峰を見上げる。
黒峰 達哉 :
「りんごジュースおかわり要ります?」
「できますよ。オムライスでよろしいですか?」
久遠緤 :
「いります!!」
クランシェア :
「できるんだぁ! じゃあオムライスでよろしくぅ!」
黒峰 達哉 :
では手際良くおかわりを入れます
クランシェア :
「ぁ、グリンピース入れないで……ね?」
黒峰 達哉 :
「承知しました。しばしお待ちくださいませ」会釈してすっと厨房に向かう
暖簾くぐる前にそれを聞いて「……。かしこまりました」厨房へ
久遠緤 :
「グリンピース嫌いなのか?」
クランシェア :
「うん……ちょっとぉ」
メニューで顔を隠し頬を染める。
久遠緤 :
「まあ、嫌いなもん無理して食べる必要ないもんな……」
クランシェア :
「ぁ、緤さん……だっけ、私の事気にしないで食べて……ね?」
久遠緤 :
「はうあ……!」
(こ、こんな子に気を遣わせてしまうなんて……!)
クランシェア :
「オムライス~♪ まっだかなぁ~」
ニコニコと鼻歌を歌い出す。
黒峰 達哉 :
「お待たせしました。オムライスになります」
好きそうなので旗も立ててます
久遠緤 :
「美味そう……。兄ちゃん料理うまいんだな」
黒峰 達哉 :
「お飲み物はいかがなさいますか」
クランシェア :
「わぁ、美味しそう! ありがとぉ、お兄ちゃん♪」
「えっと……ドクターペッパーある……?」
黒峰 達哉 :
肩を竦め「暫くバイトしてますからね」
「……。すみません。コーラでは駄目ですか」
久遠緤 :
「どく……?」
クランシェア :
「うん、コーラでもいいよ~」
久遠緤 :
めっちゃ言いづらそうに
「あの……兄ちゃん、さっきはその……ごめん……」(超小声
黒峰 達哉 :
「承知しました」
冷蔵庫からキンキンに冷えたコーラ出して瓶開けてコップにつぎ
「え。……。いえ。……別に。その……」動揺して目が泳ぎ、お盆を抱きしめる
「こちらも、言いすぎました。……あなたの境遇を知っていたにもかかわらず、その……、配慮が足りず、申し訳ありませんでした」
ピアス弄って目逸らし
「……本心じゃ、なかったんです」ぽつりと呟く
クランシェアの目の前にコーラ置き
「……プリン。開け方わかりますか」指差し
クランシェア :
「これこれ、やっぱこれだよねぇ」
グビグビと飲み始め、黙って食い始める
久遠緤 :
「いや、最初に喧嘩売ったの俺だし……。それに、UGNの人間にもいろいろあるみたいだし……」
「プリン……気を付けないと跳んでくるんだよね。昔食べたよ」
黒峰 達哉 :
「……。まぁ、でも。私もその、随分考えなしのことを言ってしまったので、このぐらいは……」ピアス触りながら
「また遊びに来られるようなら料理はおつくりしますよ。連絡先は……ない、か。いつでもとは都合が付かないかもしれませんが、少なくともここの人間は、皆……そうすると思いますから」
久遠緤 :
「うん……。UGNは嫌いだけど、兄ちゃんとお友達のヤツなら悪いヤツじゃなさそうだし……。また、遊びに来る」
黒峰 達哉 :
ちょっと安堵したように
「ええ。お約束しますよ。……またのご来店をお待ちしております」