
―Collaboration
Episode4
リンクとリヴィス
リヴィスは散歩をしていた。
全く完全に暇だったというわけではないが、心持は多少暇だった。
何かオモシロイことないかな、と思いつつそうは呟いていても仕方がないから、日替わりの重点任務でも軽くこなしてこようかな、と愛用品を手にゲートエリアを走り回った時だった。視界の端に知り合いが入り込んで、立ち止まる。
数歩近付いて、姿をしっかりと確認する。識別コードもやはり知り合いのものだ。
「……なにしてんだ、あんた」
一瞥の先にあるのは常日頃緑の衣装を身に纏っているニューマンの男、リンクが座り込み頬杖を付いてぼうっとした顔を張り付けている姿だ。
同じくリンクもこちらに視線をくれて、しかし姿勢はぴくりとも崩さない。
「待ってる」
「何を」
当たり前に質問を重ねると、リンクは眼球だけ動かしてゲートの先を見る。
「何だと思う」
一応聞かれた身として、近頃の様子や状況、その他諸々色んな事に思いを馳せてみたところ、思い当たる節もないので正直に答えることにする。
考えてみれば、別にわざわざ気を利かせて機嫌を取るような相手でもない。
「いや、知らないけど……」
「そう。お前が知る筈はない。これは俺にだけわかるべき事だ。お前が答えを持っている筈はない」
「はあ……、」
多少興味を引く物言いだったので、少しばかり話に乗ってやる。
「じゃあ、何を待ってるんだ?」
「さあ」
「ええ……」
余りの即答ぶりに困り果て、近くの階段に適当に座り込む。
どうせこいつも暇なのだ。つまりそういうことなんだろう。と思ってみる事にした。
リンクが怠慢な口調で語り始める。
「老人は大概にして、こうして道の端で何かを待っている。老人らしいと思う。俺も倣ってみた」
「……退屈そうだな」
「実際退屈なんだ。老人は過去が長く老い先短いので、きっと慌てて何かをする必要がない」
「……ほー?」
「俺は今のところ、恐らく刺激を待っている。目も眩むような非日常的な冒険を待っている。例えば、そういうことを待っている」
「そいつは、悠長なこったな? サッサとやる事見つけて忙しく動き回っちゃえばいいのに」
「それは、若者の発想だな。俺は昔そうだった。見る物全てが輝いて、馬鹿だから力づくで物事を動かし回した」
「……馬鹿な事なのか?」
「全然悪いことじゃない。若者ならかくあるべきだな。老人はそうじゃない。待つものだ」
「……そうは言っても、あんた見たところまだ若いだろ……?」
「でも、俺が待つことで、忙しい若者のお前が立ち止まっただろう。そうして、今お前は俺の話を聞いている」
リンクに真面目な顔で見つめられ、思わず難しい顔をして考える。聞いた方が早いと思い直して、続きを促す。
「……それで?」
「あるいは、お前を待っていたということかもしれない。ということだ」
神妙に深く頷くリンクだが、一方リヴィスの方はしっくりきていない。
「……ワカラナイな。話があるなら待ってないで話し掛けに来ればいいだろ?」
「俺は別に今お前に話があったわけではないからな。お前に用事があったならそうしてる。別に立ち止まった相手が他にいるなら誰にこの話をしたっていいんだよ。でも、その話を、お前が立ち止まって、お前が聞いたんだ」
「……。なんていうか、ブンガク的、だな? 俺は待つ側より、いつでも全て自分で動かしていきたいけどな。」
「そーかもしれない。俺は今日はとても老人らしい気分だし、ついでに時々詩人だ。一曲きいていくかー」
「お前の冗談イマイチわかんねーよ……」
「わかる。わかんねーことがわかる」
一定量喋り済んで、リンクは満足して遠目にゲートの先から来たるかもしれない友人を待つ。
こうしていると、色んなことを思い出す……あの頃のあの時は確かにきちんと友人も帰ってきたし、今こうしてすぐ横には新しい友がいて漫談を交わせている。と、そういう事柄に緩やかに頷くが、リヴィスはそういう事情を心得ていないのでその横顔を見て素直に困惑するばかりであった。
「……で? その素敵な老人でんでもって時々詩人さん。若者の俺と忙しなく任務という散歩に出る気はアリマセン? 何かオモシロイこともあるかもよ?」
「……そうするか。」
リンクはしっかりとリヴィスを見つめ、頷いてニッコリ笑って立ち上がった。
アークスの、仕事の合間の普段書き残すまでもないいつもの雑談である。
フレンドのリヴィス君をお借りしました。いつも仲良くしてくださって本当にありがとうございます!
対比で元主人公と主人公っぽくなるかなとか思ったけどなんか調味料が足りなかった模様。