
―HISTORY
Episode1
ユヅキ
市街地のダーカー殲滅任務に向かうユヅキ。
この船には沢山の無実の市民と、家族がいる。
光栄なるアークスになったのも家族のおかげであり、その家族や人々を護り、役立つためにアークスになった。
幼い頬で火の粉を掻い潜りながら、兵器を握り締めて走り続ける。
「ポイント C-2 に大型のエネミー反応です!」
慌てふためくオペレーターの声に、内臓された発信機のあるこめかみの位置に手を当て返答する。
「こちらユヅキ、了解しました! 今から所定のポイントに向かい、対応します」
逃げ遅れた市民を発見し、即座に飛び降りガンスラッシュで大型エネミーの脚を打ち抜いて女性市民に膝をつく。
「怪我はないですか? ひとまず北へ、避難経路に従って退避してください」
頷いて乳児を抱え疾走した市民の背を見送り、向き直る。
蜘蛛の大型エネミー、ダーク・ラグネ。
咆哮の直後に放たれる雷撃を胴体下へ転がり込んでかわし、有利な戦闘場所を見渡した時、援軍がいるのが見えた。
先輩であるゼノと、相棒アフィン。微笑み一つで挨拶を交わし合い、駆け抜けたユヅキを追おうと振り向くラグネにゼノが一閃見舞う。
余裕の笑みのゼノとぎこちないアフィンが気を引く裏、瓦礫の上に長銃を構えたユヅキは体勢を低く保ちラグネの核に赤い塗装の脆弱化弾を放つ。
針の刺さったような痛みに跳ね上がったラグネの前脚をゼノが斬りつけ、アフィンが銃弾を打ち牽制する。
間もなく、衛星砲がラグネの赤黒い核に降り注ぎ、直撃に焼かれた体が崩れ落ち灰と化す。
控えめに瓦礫の山から飛び降りたユヅキが、アフィンとハイタッチしてゼノに抱え寄せられ頭を撫でられる。
「皆さんの協力があって、僕はここにいます。本当に助かりました」
恥ずかしそうにはにかみながら、抱き締めた長銃からゆっくりと右手を離し、赤い頬と毅然とした眼差しを持って敬礼した。